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原子間力顕微鏡(AFM)では、観察するサンプルに合わせて測定モードを選ぶことができます。そのサンプルの特性や目的に合わせて最適な測定モードを選ぶことが大切です。
原子間力顕微鏡(AFM)では、測定する物体に合わせて、測定モードを選択することができます。原子間力顕微鏡(AFM)の測定モードは大きく分けて2つ、「コンタクトモード」と「ダイナミックモード」です。両者の主な違いは、サンプルに接触するか否か。かつての主流はコンタクトモードでしたが、近年では、ダイナミックモードがメインになっています。
DCモード、静的モードとも呼ばれる「コンタクトモード」は、カンチレバー先端についた探針が、試料表面と一定の接触をしながらスキャンしていきます。その際のカンチレバーのたわみによって、形状や凹凸、表面物性などを観察することができます。比較的硬い試料を得意とし、カンチレバーはSiN(窒化ケイ素)製のものが多いといわれています。
シンプルな原理で、使い勝手がよく、直接サンプルに触れるため正確性が高いというメリットがありますが、試料の制限が多いこと、探針や試料が摩擦によってダメージを受けてしまうこと、基板への吸着が弱い分子は走査によって探針に引きずられてしまうこと、などの弱点もあります。
共振モード、ACモード、動的モードとも呼ばれる「ダイナミックモード」は、ピエゾ素子などによってカンチレバーを振動させた状態で探針を試料に近づけ、原子間力によって生じる振幅の変化を検出します。試料と探針が接触しないため、探針にも試料にもダメージが比較的少ないこと、柔らかいものや凹凸の大きいもの、動きやすいもの、吸着性のあるものにも対応できるなど、試料の制限が少ないこと、などのメリットがあります。
コンタクトモードと分解能の点で比較されることもありますが、走査範囲が数μm以上であれば、コンタクトモードと遜色はないといわれています。カンチレバーはSi製(シリコン)のものが多いようです。
原子間力顕微鏡(AFM)では、「コンタクトモード」と「ダイナミックモード」をベースにした応用テクニックを用いることで、形状だけでなく、電流や電位、硬さ、粘弾性など、様々な表面情報を得ることができます。その代表的なものとして、試料性質を知る位相モード、吸着力や緩和力を測定するフォースカーブ、表面の磁気情報取得する磁気力モードが挙げられます。
そのほか、表面の粘性や弾性を画像化するフォースモジュレーションモード、試料の局所的な抵抗率を反映した画像を得る電流モード、試料表面の電位を測定する表面電位モードなどがあります。
もともとの加振信号の位相に対して、カンチレバー振動の検出信号の位相が、どれだけ遅れたかを検出。この遅れによって、試料表面の特性の違いが画像化されます。吸着が小さかったり、表面が硬い場合には、位相の遅れは小さくなり、吸着が大きかったり、表面が軟らかい場合には、位相の遅れは大きくなります。そのため、形状だけではわからない表面物性の違いを見たり、高分子ブレンドポリマーの相分離構造の解析の際に有効です。
探針と試料の距離を変えながらカンチレバーのたわみ量を測定して、探針と試料間の距離と、カンチレバーに働く力の関係を記録した曲線から計測するモードです。フォースカーブを測定することで、引力・吸着力・試料の硬さなどの相互作用を観察することができます。カンチレバーの詳細な選定や特性のチェックなどに用いられることもあります。
MFM(磁気力顕微鏡法)とも呼ばれる観察方法。尖端が磁化した探針を共振周波数付近で振動させて、試料から一定の距離を保った位置を走査すると、試料表面から漏れた磁場によって探針が斥力や引力を受け、カンチレバーの振幅や位相が変化します。この変化量を検出することで、試料表面の磁気情報を画像化させる方法です。
下記のリンクでは、カンチレバーやピエゾ素子、スキャナなどに関わる「原子間力顕微鏡(AFM)」の基礎知識もまとめていますので、AFMの比較・検討時に、ぜひご参考ください。
原子間力顕微鏡(AFM)では、観察対象となるサンプルに合わせて様々な測定モードを使い分けることができます。そのサンプルは硬いのか軟らかいのか、動きやすいものなのかなど、試料自体の特性はもちろん、サンプルの何を計測したいのか、どんな情報を取得したいのかというように、目的に合わせて最適なモードを選ぶことで、より詳細で正確な数値を得ることができます。サンプル計測を最適化するためにも原子間力顕微鏡(AFM)にはどのような測定モードがあるのかを知り、正しく設定して使用することが重要です。
このほか当サイトでは、AFMが活用されている研究分野や、具体的な活用事例を取材して紹介しています。導入を検討される際は、以下のリンクもチェックしてみてください。
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