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【特集】研究者が選ぶ“高分解能”原子間力顕微鏡(AFM)の魅力

目次目次

原子間力顕微鏡(AFM)は、実際どの研究分野で、どのようなサンプルの観察に活用されているのか、メーカー取材を通して詳しく解説。AFMで「調べられること/できること」など、具体的なポイントも紹介します。

“高分解能”原子間力顕微鏡(AFM)で調べられること

AFM(Atomic Force Microscope)は、様々な産業・研究分野に導入されています。半導体や金属などの無機材料から、薄膜やポリマーなどの有機材料、そしてライフサイエンスの分野まで、幅広く活用が可能です。

無機材料 AFMによって無機材料(半導体・金属・セラミック)の表面粗さや電動特性などを正確に計測することができます。
微細なパターニング膜の構造分析にも対応可能です。
有機材料 有機ELディスプレイをはじめ、折り曲げられるスマートフォンなど、有機薄膜に関する研究も盛んに行われていることから、構造を観察し特性を評価するための強力なツールとして、AFMの活用が進んでいます。
ライフサイエンス ヘルスケアや医療といったライフサイエンス産業では革新が求められる昨今、タンパク質やDNAといった生体分子においても、AFMを用いた研究が進んでいます。

このページでは、バイオ系の研究に携わる研究者に向けた、原子間力顕微鏡(AFM)の具体的な活用事例も紹介しています。導入検討のご参考に、ぜひご覧ください。

“高分解能”原子間力顕微鏡(AFM)が導入されている研究分野

ナノスケールでの表面観察を得意とするAFMは、材料科学や生物医学、薄膜技術など、多くの分野で取り入れられています。ここでは、環境科学や無機化学などの研究にも使用されるAFMが、具体的にどのように活用されているか、事例を交えて紹介します。

【材料分野】での活用事例

例えば「太陽光電池材料」の研究分野では、薄膜を感光素子に形成させ、その時の表面粗さや電気特性の測定を行う目的でAFMが使用されています。ICチップに用いられるような「半導体基板」の表面の凹凸が、どの程度であるかをnmオーダーで検査することができます。

また、フェーズコントラスト測定やフォースカーブ測定による「高分子の相分離状態」の定性・定量的な分析にも用いられています。

【ライフサイエンス分野】での活用事例

AFMがライフサイエンスの分野で注目され始めたのは、細胞の硬さが正常細胞とがん細胞で異なることが発見されてから。AFMを用いてフォースカーブ測定を行い、求められた細胞の弾性率の違いから、がん疾患の特定につなげる研究などが行われています。

最近では、カンチレバーを細胞に押し込みながら「細胞膜の強度」を測定したり、カンチレバーに抗体分子を着けた状態でフォースカーブ測定を行うことで、「細胞と抗体間の結合力」を測定する研究現場でも活躍しています。
また、DNAオリガミやクロマチン分子のような生体分子の構造をイメージングする目的でも導入されており、特にアルツハイマー疾患の原因とされているアミロイド繊維の構造転換の分野では、その分子構造をイメージングする技術として使用されています。

【特集】取材協力:日本カンタム・デザイン株式会社

Quantum Design Japan map
画像引用元:日本カンタム・デザイン公式HP(https://www.qd-japan.com/company/abroad/)

日本カンタム・デザインは、米国外資系メーカーである「米国カンタム・デザイン社」の日本法人として設立され、様々な測定に対応できる、ユニークで柔軟性の高い原子間力顕微鏡(AFM)を取り扱っています
また、ハイテク技術商社として、世界中から輸入した研究用各種装置の販売も手掛けており、Nanosurf社『DriveAFM』は、ドイツ・ミュンヘンで開催された「SEMICON Europa 2022」において、「Wiley Analytical Science Award 2023」を受賞*。各分野での研究開発に有効なAFMが、世界でも評価されています。

参照元:日本カンタム・デザイン公式HP(https://www.qd-japan.com/products/driveafm/)
*参照元:Wiley Analytical Science公式HP(https://analyticalscience.wiley.com/do/10.1002/was.000700103)

<取材>高分解能を誇る原子間力顕微鏡「DriveAFM」活用事例

DriveAFM-新スキャンヘッド
画像引用元:日本カンタム・デザイン公式HP(https://www.qd-japan.com/products/driveafm/)

ここでは、「低ノイズ/低コヒーレントのSLD光源」、「低ノイズ/高帯域幅の光検出モジュール」、「低ノイズ/高帯域幅のCXコントローラ」の3つの組み合わせで極低ノイズフロアを実現する、日本カンタム・デザインの「DriveAFM」(Nanosurf社製)に着目。
高感度・高分解能のイメージングと力学測定を可能にし、倒立型顕微鏡上で光励振ができるハイエンドモデルとして導入されている「DriveAFM」は、一分子から生細胞までカバーした高度なライフサイエンスの研究にも使用されています。

以下では、日本カンタム・デザインの社員の方にお話を聞き、「DriveAFM」で何ができるか?を具体的に紹介していきます。

何ができる?「ライフサイエンス」「マテリアルサイエンス」での活用

「DriveAFM」は、“業界有数の性能を誇る”AFMとして知られています。
一番のポイントは、何でしょうか?

ポイントは、独自開発した「WaveMode」による、高速かつ高分解能なイメージング技術です。新しく開発された「Clean-Drive」という光励振機能と、特許を取得したダイレクトドライブスキャナー、高分解能コントローラにより実現可能となった世界初の測定モードです。

アプリケーション-DNA拡大
画像提供:日本カンタム・デザイン

(画像)DNAの二重らせん構造のうちメジャーグローブとマイナーグローブと呼ばれる周期的な構造を観察できるほどの高分解能なイメージング

DriveAFMのKPFM像
画像提供:日本カンタム・デザイン

(画像)KPFMと呼ばれる表面の仕事関数を解析する接触電位差測定においては、従来よりも高い空間・電位分解能で測定が可能に

ライフサイエンスの研究分野では、「DriveAFM」はどのように使用されていますか?

主に、力学測定と呼ばれる、サンプルの硬さや分子間の結合力を測定する用途と、DNAオリガミやアミロイド形状などのイメージングの分野に用いられます。

DriveAFMでは、DNAの二重らせん構造に特徴的に表れている「メジャーグローブ」と「マイナーグローブ」の違いを明確に区別できるほどの空間分解能を実現しながら、細胞などの大きな構造体もイメージングできます。また、独自の「WaveMode」を用いることで、緩衝液中のサンプルのわずかな凹凸で可視化し、さらにビデオレートに近い速度で画像化できるため、時間的な変化を明らかにすることも得意とします。

近年注目を集めている「ウイルスの研究」においても、非常に低ノイズかつ低侵襲でイメージングができるため、カプシドの表面の構造の解明や、カンチレバーの押し込みによる力学応答の解明から、「感染力の研究」などにも使用されています。

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「DriveAFM」のマテリアルサイエンスにおける活用事例を教えてください。

DriveAFMのWaveModeイメージング
画像提供:日本カンタム・デザイン

独自のWaveModeを用いて、ポリマーの結晶構造由来の、わずかな高さ変化も測定できます。高い空間分解能をもつDriveAFMは、これまで明らかにされていなかった、より微細な構造をイメージングするのに適しています。

今後「DriveAFM」は、どのような研究現場で、より求められていくでしょうか?

近年、半導体需要は大きな高まりを見せています。中でも、半導体プロセスの微細化は今後大きな課題となり、製造技術の進歩に伴い検査技術も進歩していくと予想されます。まさにAFMは、微細化する半導体プロセス検査技術の中でも、重要なキーテクノロジーとなります。
日本カンタム・デザインが提供する「DriveAFM」の高分解能かつ高速なイメージング技術は、半導体検査分野においても、重要な役割を担っていくことを確信しています。

【動画で解説】AFMの評価はノイズレベルも重要!

小さなサンプル表面を原子レベルで測定できるAFMの評価指標は、分解能だけではありません。観察データの信頼性を担保するのは、精度に直結するノイズレベルといわれています。

測定環境やサンプルに伝わる振動、カンチレバーの走査速度、検出器など、複数種類のノイズレベルが測定結果に影響することも考えられるため、まず使用前には、様々なノイズレベルを最適化する必要があります。環境条件や振動などに極力左右されず、高度な測定結果が得られるAFMこそ、測定精度の高いAFMといえるでしょう。

動画引用元:NanosurfVideo公式YouTube(https://youtu.be/IUEcKIJGvEc)

この動画では、光振動により従来の20倍以上という高速で測定を行う「DriveAFM」のパフォーマンスを、映像を交えて紹介しています。注目は、液中でも高分解度の分析を取得する様子や、ポリマーのような柔らかいサンプルの微細な凹凸も明確に捉えることができる仕組み。ソフトウェアによる完全制御で、すべての動作が完全に自動化されていることも特長です。

参照元:日本カンタム・デザイン公式HP (https://www.qd-japan.com/products/driveafm/)

研究サンプルとの適合性を
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日本カンタム・デザインの“高分解能”原子間力顕微鏡(AFM)よくあるQ&A

日本カンタム・デザインが取り扱うAFMについて、購入検討前の疑問や導入後の操作性などについてまとめています。

取り扱っているAFMの特徴は?

日本カンタム・デザインでは、正立顕微鏡に取り付けて使用可能な「LensAFM」など、ユニークなAFMを取り揃えています

例えば、通常の光学顕微鏡では、サンプル表面に付着した異物か、キズなどの凹みか明確に判断できない場合や、位置合わせが困難というデメリットがありました。これらを解決する「LensAFM」は、光学顕微鏡で位置合わせした箇所をそのままAFM測定できるため、それぞれのデメリットを補うことができるAFMとして提供しています。また、市販の各社正立顕微鏡にも取り付けができるため、様々な製造現場でも活躍中です。

デモの実施を相談したいです。どの製品でも対応可能ですか?

デモ測定は、「NaioAFM」、「CoreAFM」、「DriveAFM」にて対応が可能です。詳細は、別途日本カンタム・デザインへお問い合わせください。以下の動画では、「NaioAFM」の操作方法を確認できますので、併せてご参考ください。

動画引用元:NanosurfVideo公式YouTube(https://youtu.be/-IZfC5w-A6g)

そもそも、従来の計測器と何が違うでしょうか?

現在、電子部品の微細化に伴い、ウエハ基板に求められる表面粗さは、サブミクロンの領域を超えて「サブナノメートル」の領域まで到達しています。これらナノメートルの領域は、従来の測定器では計測ができない領域ですが、Nanosurf社の「FlexAFM」は、最大4インチまでのウエハの非破壊測定が可能です。

また、グローブボックス内での使用や各種電気的な測定も可能で、前工程の表面粗さの測定から実装後の評価までを1台で対応できます。同じスキャンヘッドでステージをカスタムすることで、ラボから実際のプラントまでをスムーズにスケールアップすることも叶います

サンプル交換や位置合わせは、訓練が必要?

いいえ。Nanosurf社のNaioAFMは、EasyScanの後継機にあたる機種で、EasyScanの操作性をベースに、よりコンパクトかつ誰でも使いやすいように改良されているため、AFMを扱ったことのない研究員でも、簡単に操作できます。

カンチレバーのレーザー調整が不要で、内蔵のトップビューカメラにより、サンプルの位置合わせも簡便。また、USB1本をパソコンに接続するだけで測定を開始できる点も、導入後のお客様に好まれています。

その他の質問について
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本社所在地 東京都豊島区高松1-11-16 西池袋フジタビル2F
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企業HP https://www.qd-japan.com/