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原子間力顕微鏡(AFM)におけるスキャナは、カンチレバー先端に付いた探針とサンプル表面との距離を保持するための装置であり、正確な測定のためには欠かせません。原子レベルでの分解能を実現するスキャナの役割と仕組み、取り扱い時のポイントについてまとめています。
原子間力顕微鏡(AFM)におけるスキャナとは、円筒形のピエゾ素子側面に、X方向用、Y方向用、Z方向用の検出電極を貼り付けたものであり、カンチレバーについた探針の先端とサンプル表面との距離を保持するため、その位置精度を保つために使用されています。
ピエゾスキャナ、三次元スキャナとも呼ばれ、荷重に応じて電極に発生する電圧をモニタリングすることで位置制御します。カンチレバーの動きを検出しつつ、スキャナによって三次元的に精密走査・制御されることで、原子間力顕微鏡(AFM)では、原子・分子レベルでの分解能の実現が可能になります。
ピエゾ素子(圧電素子)は、電子ライターなどの着火装置などにも使われていて、電子ライターでは、ハンマーによって素子の結晶に機械的な歪みを与え、素子の対面点極間に分極電位差を発生させ放電を誘発します。この効果を逆に利用し、対面する電極間に高電圧を印加して、特性に応じて結晶の歪みを発生させた素子を組み合わせて構成されたものが三次元スキャナです。
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原子間力顕微鏡(AFM)では、サンプルの表面の凹凸や形状を測定し、それをトポグラフィーとして表します。
原子間力顕微鏡(AFM)は、カンチレバーの先端に取り付けられた探針がサンプルの表面をスキャンし、その反り(コンタクトモード)や振動(ダイナミックモード)によるたわみ量が一定になるようにフィードバックをかけながら走査していきます。このときのスキャナの伸長量を表面凹凸情報として取得し、コンピューターで画像化することで、正確なトポグラフィーを取得することが可能になります。
円筒形のピエゾスキャナにおいて、カンチレバーはサンプル表面を水平方向(XY)に走査しながら、反りや振動が一定になるよう、サンプルからの距離(Z)をフィードバック制御していきます。X・Y軸それぞれの位置に対応したZ軸のフィードバック量(スキャナへの出力電圧)を計算機に取り込んで三次元画像として再生処理することで、サンプル表面の凹凸などの形状を得ることができます。
原子間力顕微鏡(AFM)のイメージング速度を上げるために開発された高速スキャナでは、X、Y方向を板バネによって変位させるという構造が用いられています。イメージング速度が速くなれば、走査にかかる時間も短縮できますが、スキャンを高速化するとプローブがサンプルに接触して壊れてしまったり、分子の動きを阻害するなどの影響も起こりやすくなるといわれています。
原子間力顕微鏡(AFM)をはじめとする走査型プローブ顕微鏡(SPM)では、スキャナの駆動範囲によって観察できる範囲も決まってきます。一般的なスキャナの最大走査範囲(XY)は10μm×10μm、高さの可動範囲(Z)は1μmほどといわれています。
広域走査用のスキャナとして、XYの最大値が100μm以上、高さ(Z)の最大値が10~15μmというものもありますが、カンチレバー先端の探針は数μmのものが一般的であること、また、探針は三角形で根元になるほど太い形状のため探針よりも深い部分を走査することができないなどの理由から、各装置で観察範囲が異なっています。
正確な測定のためにも、サンプルのサイズに適したスキャナが必要であること、また、原子間力顕微鏡(AFM)は高い解像度で測定するため、サンプルが大きいと測定に時間を要してしまうことを考慮し、最適なサンプルとスキャナの組み合わせを選択することが大切です。
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