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原子間力顕微鏡(AFM)に欠かせない存在のカンチレバー。カンチレバーは測定モードによっていくつかの形状があり、長さも異なります。探針に様々なコーティングがされているものもあります。カンチレバーの特長と種類についてまとめています。
カンチレバーとは、長さ100~200μm(マイクロメートル)の、薄く柔らかい板です。先端には、目では見えないほどの探針がついています。その針が試料の表面をなぞっていきますが、カンチレバーの背面にはレーザーを反射する金が被覆されていて、そこにレーザーを照射すると、カンチレバーが上下するのに伴い、レーザー光の反射方向が変化します。この変異を光センサーで観測して画像に変換していくのが原子間力顕微鏡(AFM)の仕組みです。これによって、ナノレベルの微細な力も検出することができます。
原子間力顕微鏡(AFM)が測定する原子間力とは、探針と試料の間に働く力の総称であり、ファンデルワールス力、静電気力、磁気力などもこれに含まれます。原子間力はあらゆる物質の間に働くため、簡単に試料を観察することができ、装置のタイプによっては大気中も液体中でも、高温や低温であっても測定することが可能です。
測定モードによって、三角形状や短冊形状があり、その片持ち梁の先端に半導体プロセス工程を応用した探針が一体形成されています。SiN(窒化珪素)やSi(シリコン)製のものが多く、大きさは、長さ200μm、厚さ1μm、探針は長さ3μm、探針尖端の曲率半径は20nmというのが一般的です。
探針は用途に合わせて様々な形状があり、電磁気特性や耐久性を持たせるため、探針に磁性体や金属膜、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)などをコーティングしているものもあります。
例えば、コンタクトモード用のSiN製カンチレバーには、長さが200μmのものと100μmのものがあり、ばね定数に違いはあるものの、探針形状は同じです。長い方(200μm)は、光軸調整操作が簡単で、試料に加わる力が極めて小さいという特長があります。短い方(100μm)は、カンチレバーのてこ比が高く感度が有利であり、静電気に弱い装置ではこちらが選択されます。
カンチレバーには様々な種類があります。長さ、厚み、軟らかさが変わったり、極限まで小さくなったり、炭素のみで構成されたカーボンナノチューブなどの技術も取り入れられています。
原子間力顕微鏡(AFM)の動作モードにはいくつか種類がありますが、大まかにコンタクトモードとダイナミックモードの2つに分けられます。
カンチレバーの反り具合から静的な原子間力を検出。カンチレバーを試料表面に近づけるとわずかな斥力によってカンチレバーがたわみます。そのたわみが一定になるようにフィードバック制御をし、フィードバック量を計算機に取り込んで表面の凹凸を映像化します。コンタクトモードではSiN製カンチレバーが使用されることが多く、比較的硬い試料で用いられます。
カンチレバーに縦方向の励振を加え、共振周波数付近で振動させた状態でカンチレバー先端の探針が試料に接近すると振動が変化。この現象を利用し、振動振幅が一定になるようフィードバック制御をしていきます。
Si製のカンチレバーが使われることが主流で、比較的柔らかいものや凹凸の大きいものに用いられ、コンタクトモードよりも制限が少ないといわれます。
探針尖端が摩耗・破損・汚れの付着などによって劣化すると、分解能が低下し、画像がぼやけてくるので、その際は交換を検討しましょう。
カンチレバーの探針はとてもデリケートで壊れやすいため、取り扱いには注意が必要です。また、カンチレバー自体、とても微細な装置のため、その装着はとても細かい作業になります。カンチレバーは通常、1.5mm×2.5mmほどの土台から生えたような形状になっていて、交換などの際には、土台をピンセットで挟んで取り扱います。そのため、取り付けの際に落としそうになったり、うまく取り付けることができないというケースもあるようです。その場合は、「取り付け治具」を使えば簡単に装着することができます。
カンチレバーは取扱いに注意を要しますが、そこさえ気を付ければ、メリット享受のほうが大きい器具です。
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